岡本 英敏(高校教師)

戦後史学における歴史否定の問題とその相克(後篇)

八 「History」ではなくなった日本の「歴史」 ここで一言、ランケ史学の問題点についても触れておかねばならない。近代歴史学の確立にランケが果たした役割は如何様にも否定できるものではない。とりわけ、未だ文学の領域と不分明であった歴史学に史料批判と…

戦後史学における歴史否定の問題とその相克(中篇)

五 「先祖に対して抱く共通の誤解」も必要 「民族とは、先祖に対して抱く共通の誤解と、隣人に対して抱く共通の嫌悪感とによって結び合わされた集団である」、との言がヨーロッパにはある。一般にこの言葉は、所詮は民族なるものは幻影にすぎないとの例証と…

戦後史学における歴史否定の問題とその相克(前篇)

一 ヘーゲルか、ディルタイか? 「あらゆる歴史は、過去である」 「あらゆる歴史は、現代史である」 ここに二つの文章を設定してみた。前者は、広辞苑による歴史の定義、すなわち歴史とは、「人類社会の過去における変遷・興亡のありさま」から必然的に導か…

戦争の光、平和の影――福田恒存の命題(その九)局地戦争もまた、れっきとした戦争である

【命題】 一挙に全人類を死滅せしめる原水爆は「悪魔」であつて、一挙に全家族を殺す爆弾は「悪魔」ではないのか(「現代の悪魔」)。 健全な精神は、原水爆を「悪魔」と見る前にダイナマイトを「悪魔」と見、爆撃機を「悪魔」と見る前に旅客機を「悪魔」と…